ヒルメスを前に
約束だ、剣を貸してと言うアルフリード
ナルサスはアルフリードに目をやるも、
考えているような表情
大丈夫、ナルサスのお嫁さんになるまでは絶対に死なない
アルフリードはそう言うが、
ナルサスはまず「あの男」と話をさせてくれ
自分の方が因縁では先だと答える
「ヘボ画家呼ばわりされた」
『強く、大きい父だった。
誇りを受け継ぐ少女は、
今、敵の仮面を前に起つ!!』
ナルサスは馬を歩かせヒルメスに近づき
「ヒルメス殿下!!」
驚くヒルメス
しばらくの沈黙の後
「なぜ
わかった」
ナルサスはカマをかけていた、
まさかとは思っていたがナルサスの予想が当たる
『殿下』という言葉に混乱するアルフリード
いずれは知れることだ、とナルサスの言葉を待たず
話が早くなったと喜ぼうと言い、さらに問いかける
「アルスラーンめを捨て
この正統の王たる
俺の部下になれ
重く用いてくれる」
重くとはとたずねるナルサス
ヒルメスは万騎長(マルズバーン)でも宮廷初期でも宰相でもと続けるが
ナルサスが大声で笑い、言葉を遮る
仕える気はあるのかとたずねるヒルメスに対し
ナルサスはあっさりと断る
「ひとたび隠者としての生活を捨てたからには
器量の優れた主君をもつことが生涯の望み」
「今 わたしにはそれがあるのに
みすみすそれを捨てる気には
残念ながらなり申さぬ」
自分の器量がアルスラーンに劣るのかと
怒りを抑えた声でたずねるヒルメス
「いかにも!!
アルスラーン殿下のご器量は
齢(よわい)十四にしてすでに
貴方(あなた)の上を行く!」
鋭い目つきになりつづける
「なにゆえ
ルシタニア人と手を組んだのですか
ヒルメス殿下!!」
なぜパルスの民を裏切り、村を焼いたのか
そしてエクバターナを混乱に陥れた理由をたずねる
「正統の王位を回復するために必要な儀式だ!!
まもなく仮面を外した正統の王・ヒルメスが
ルシタニアからパルスを開放するであろう」
パルスの民はこれまで正統でない王を奉っていた
その罪を正統な王である自分が正すのは当然だと言う
もう一つ気に入らないことがあると言うナルサス
「アルスラーン殿下は私に部下になるようお頼みになった」
「ところが貴方は頭ごなしに命令なさる」
「俺はオスロエス5世の子だ
命令して何が悪い」
ヒルメスの言葉にアルフリードが怒りを表す
「あたしのナルサスは
お前なんかの部下になったりしないよ!!」
「ほう…
ダイラムの領主は高貴な諸侯(シャフルダーラーン)の身でありながら
下賤な盗賊の娘が好みか」
落ち着き払ったヒルメスが言う
「え!?貴族!?
ナルサスが!?」
驚くアルフリードに対しナルサスは
自分の母もアルフリードと同じで自由民(アーザード)だ
と落ち着かせようとする
しかしアルフリードは加えてヒルメスに対し
「あんた何者!?」
と落ち着く気配はない
ヒルメスはアルフリードを無視しナルサスに問いかける
アルフリードにアルスラーンの話をしていないのは
自分の従うアルスラーンが簒奪者と自覚しているからだろう
卑怯者め、と
卑怯はそちらだとナルサスも黙っていない
仮面で顔を隠しルシタニアの手先となる
仮面を外して解放者を装いパルスの王を称する
それは知恵ではなく、奸智(かんち)で卑怯だと
「恥じるところはござらぬか!?」
激怒するヒルメス
「正統の王をそしるか!!」
ナルサスが返す
正統や異端は関係ない、
王家の血を引いていなくとも
善政を行って民の支持を受ければ
立派な王
それ以外に資格はいらないと
ヒルメス「パルスの統治をするのはカイ・ホスロー英雄王の子孫であるべき」
これに対してもナルサスは間髪入れずに返すカイ・ホスロー王の前にパルスを統治していたのは
蛇王ザッハーク
さらにその前は聖賢王ジャムシード
カイ・ホスロー王はいずれの血も引いていないと
「黙れ!!!
黙れ 黙れ!!」
よく分かった、と言い剣を抜くヒルメス
ナルサスをパルスの伝統と王威を破壊せんとたくらむ不逞の輩として
「この手で首と舌を切り取ってくれる!!」
ナルサスも剣を手にし、抜いた
ヒルメス「おぬしら
手を出すなよ」
ザンデと部下たちにそう言う
「おい そこのでかぶつ」
ナルサスがザンデに言う
パルスの騎士であるからには女には手を出すな、と
ヒルメスの頭上に太陽が輝く
ナルサス「これは国王の名誉にかけてのことだぞ」
馬上で対峙する2人
「死ね!!
ナルサス!!」
ヒルメスが剣を振り上げた
剣を体の前で立て、身をかがめるナルサス
剣が輝く
剣に反射した日光がヒルメスの視界を奪った
バツン
ヒルメスの握る手綱が切れた
ナルサスが切り裂いた
バランスを崩したヒルメスは馬から降りる
「逃げるぞアルフリード!!」
驚きながらもアルフリードは応える
ヒルメス「ナルサス!!
貴様 尋常に立ち会うのではなかったのか!?」
「正統の国王に向ける剣はござらぬよ」
ナルサスは余裕の笑みだ
仇討の機会を奪ったとアルフリードに謝るナルサス
それよりもいろいろびっくりしてしまって…と答えるアルフリード
ナルサスは詳しくは後で話すと言いつつも
銀仮面の本名がヒルメスということや
彼が言ったことは秘密にするよう伝える
アルフリードはナルサスが秘密と言うなら言わない
ゾット族の名誉にかけてと
「あたし達
共通の秘密を持ったってわけね」
うっとりするアルフリード
しかしナルサスはすでにはるか遠くへ
再びパルス兵に見つかってしまうナルサス
パルス兵が部下に対しザンデに報告するよう命令した次の瞬間
矢が飛んできた
パルス兵の胸を貫く
「この強弓は…!」
気が付くナルサス
力強く馬上で弓をひく姿
無数の矢が射られる
ダリューンだ
パルス兵を一掃した
ダリューン「一つ貸しだナルサス」
エラムもいる
ナルサスがアルスラーンの無事をたずねると
ギーヴとファランギースとともにさきにペシャワールに向かっていると返す
「ところで…」
こちらの女性は誰かとたずねるダリューン
答えに困るナルサス
「あたしはアルフリード」
「ナルサスの妻だよ!」
満面の笑みだ
目を白黒させるダリューンとエラム
焦るナルサス
正式には結婚していない、
本当はただの情婦だと、誤解を招くアルフリード
叫び声を上げ、尋常でないほど慌てるナルサス
ダリューンがからかってかかる
エラムに助けを求めるも…
ひどく蔑んだ目をしている
「ダリューン様急ぎましょう」
とナルサスを完全無視
ダリューンが真面目にアルフリードを連れて行くのかとたずねると
ナルサスは父に代わりゾットの族長になるために帰ってはどうだと提案
しかし、アルフリードは腹違いの兄がいる、
頭が良くて性格が悪い兄だから自分は追い出される、
心配はいらないからペシャワール行こうと
とても元気だ
万事休すといったナルサス
エラムと目が合うも

出典:別冊少年マガジン2016年7月号
蔑んだ目で睨まれてしまう…